素顔が見られる、女の子投稿型フォトダイアリー。

6:??プレッシャー
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あの衝撃な場面を目撃してからというもの緊張で頭の中が真っ白になるどころか、どういう風にプレイを楽しめば良いのか全く想像が出来ないほど思考を巡らしている。
それもそうだ。
私なりに真面目に静かに生きていたと自負している人間が特に関わることも困る事のない"男女の性を持つ人間"を目の当たりにするなど、そうそう無いのだから。
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(えっ、どうしよう…。あちらの方々って男性が好みだと、勝手に認識していたから不安が高まる…。いや、今のご時世【バイセクシャル】も認知されつつあるからこそ、多様性の時代を肌で体験(意味不)が出来る良い機会だと思えば…、ん?だとしても私を選ぶ理由って何!?)
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ぐるぐると思考を何通りも巡らすが自分の納得のいく答えが見つからない。
ここまで必死に別の理由を探すのだって本当は、私の中で確信している理由が何かを分かっているから。
逸らしたかった本音を心の内に抱けば、胸の奥が重くなる。
徐々に暗い気持ちに縛られると、プルルルッとコール音が鳴り響いた。ビクリと肩を揺らして鳴り止まないコールを手に取る。
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「凛、準備出来たか。」
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「あ…、桐咲さん、準備が整いました。」
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「なら、下に降りてこい。180分でお客さんから時間をもぎ取ったからな、頑張れよ。」
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「ひゃ、180分!?」
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「とっとと、降りてこい。」
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ガチャ。とコールの切れた音を最後に、3時間という長い時間をどう乗り切るか新たに加わった内容に自身の頭を悩ませるのであった。
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5:??影に光を差して
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黒服から店に貢献出来るか否かの話が耳に入った瞬間、女の子の真剣な問い掛けが口籠もり始めてしまう。
そんな会話を盗み聞いて仕舞えば、思わず口を開いてしまった。
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「………。おんやぁ?桐咲さんのとこにも随分と幼稚なお考えをお持ちの方がいらっしゃるようで…。」
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「…言いたい事があるなら、はっきりと言って頂こう。」
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桐咲さんは強めに目頭を押さえながら、普段より低い声で問いかけた。
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「では、遠慮なく。あのまま放置すれば、この店に夢も希望もありませんね。」
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「歯に衣着せずにはっきりと言葉にするな…。」
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彼は俺の返答に対して呆れたような口振りで言うが、事実に変わりはない。
実際、悪い事が日常で身近な場所で行われているのを店の者が目を瞑るなど言語道断である。
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「『信頼は充分な時間を掛けて慎重に継続を』。それ以上に警戒すべきは『信用は一度崩れ落ちれば、信じる心すら宿せない』。"誰かが誰か"を頼るなんて以ての外ですよ。」
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「………分かっている。」
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俺の正論に対して彼の心にどう響いたかは分からない。
だが、俺の経験則上分かりきっているのは…近いうちに彼女は自ずと壊れる。
桐咲さんだって分かっているはずだ。
まぁ、重要なポストの人間が1人を囲い込んでいたらそれこそ、由々しき事態を引き起こす事に他ならない。
慎重に動こうとして、この結果なのだろうな。
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「どうするんですか?あの子の言葉には重みがある。この店にもなくてはならない存在かと思いますが…。」
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「どうすればいい、」
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「ん?」
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「どうしたら、凛は"ありのままで________?"」
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俺は彼の言葉に耳を疑った。思わず自分の目が見開くほどには。
マジか…。この人に、ここまで言わせるってどんな子なんだ?
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「………。俺に考えがあります。お店同士では"御法度"ですが、貴方が最終的に纏めて下されば収拾がつくかと。」
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「…………アザミさん、どうか頼みます…。」
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「合点。俺は何かと、桐咲さんのお陰でこの街で好きなように立ち回り出来るんでね。俺なりに恩を返させて下さいよ。」
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普段、俺をこんな風に頼る事のない人から懇願されちゃあ動きたくもなる。
それにしてもあの黒服…。若い芽を潰すにしては、後先考えていないのが鼻につくな。
まぁ、この店とは無関係な俺がくどくど言う事でもない。黒服の上に立つ人に任せれば良いんだから。
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4:??トリッカーに目を奪われて
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(オカマ……、えっ!?今この人なんて言った!?)
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「ちょっと、質問に答えて頂戴。この子の時間は空いているの?空いていないの?」
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「ッ!こ、これはこれは…っご来店下さりありがとうございますっ。こんな所で立ち話も何ですので待合室にご案内致しますよ。」
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「早くして頂戴。」
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とんとん拍子でやり取りが行われ、(話は終わりだ。)と店の男に目線を投げかけられてしまえば私は引き下がるしかない。
オカマさんのお陰で、溢れ落ちそうだった涙も引っ込んでしまったのですごすごと待機室に戻る。
いつもだったらモヤモヤした気持ちにさせられるのに衝撃的な事が目の当たりすると、その出来事が頭で反復してを繰り返し何度も分析してしまう。
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「…なんか、何処かで見た事あるような…?気のせいかな。」
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「凛。」
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「っ!桐咲さん、いらっしゃったんですね…。あ、えっと…聞こえてました、よね…。」
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「何のことかは分からないが、8号室空いてるだろう。お前はもてなす準備しとけ。」
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「えっ!?」
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桐咲さんの口から案内を掛けられたことなんて無かったのに、それも今日!?
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「なんだ、嫌なのか?わざわざご指名を頂いたんならそのまま、あやかれば良いんだよ。」
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「で、でも…たぶん、」
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あのオカマさんはきっと、別の子を紹介される。あの男は私が喜ぶ事をさせたくないのが丸分かりだから。
暗い気持ちになり掛けた瞬間、桐咲さんから尻叩きが入る。
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「つべこべ言わずに部屋の準備に行け!お前はあのオカマの事だけ考えてれば良いんだよ。」
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「はっ、はい!」
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桐咲さんに喝を入れられ、慌てて待機室に置いてある荷物を抱え部屋に移動する。
途中、待機所にいた女の子達に何事かと目線を送られたがそんな事まで気にしてる暇はなかった。
3:??怒りのメーデー
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「散々っ、私はアンタに言ったわよね!?こっちは物を勝手に使われたり、壊されたりしてるの!」
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「出来るだけの注意はしています。ですが、彼女が聞き入れて改心するかはどうしようもないんです。」
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申し訳なさそうに眉尻を下げてはいるが、ここ最近のこの男の怠慢具合が目についているのは明白だ。
きっとこの件に関して何も動こうとはしない。
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「こっちは散々な目に遭っているのに、表立って解決しようとしないのは何故!?」
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「ですから、慎重に考えて行動しなければですね…。」
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「それはアンタらが面倒くさがって、やるべき事を有耶無耶にしたいだけでしょう!?こっちは大事な物を雑に扱われたのよ!?」
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最初は痛み止めの薬から、次に日用品などを勝手に使用されて店内で悪質な行為が野放しにされている事が許される訳がない。
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「そんなに嫌なんでしたら持って来ない事で解決するではありませんか。」
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「っ!、論点ズラしてんじゃないわよっ。」
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___ドンッ!!
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「未然に防ぐ事ならいくらでも出来る。けれど何がいけない事なのかを伝えて、今後もこの店の女の子達にとって【安心】を追い求める事が、より【危険な出来事を防ぐ】事の一番の近道なのが分からない訳!?」
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時期に盗難や女の子同士でのトラブルにもなりかねない。当の本人だってもしかしたら悪い事だと理解していれば、きっと…。
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「__ちっ、売り上げも碌に貢献の出来ない奴が偉そうに説教かましてんじゃねぇよ。」
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「っ!?は……?」
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「"凛"さんとは違って彼女は、高く売り上げに貢献して下さっています。多少の我儘や不手際が合ったとしても、彼女に温情を掛けたとして何ら差し障りもないのは貴女から見ても分かりますよね?」
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「っ……!」
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もっと、伝えたい事があった筈なのに言葉が出て来ない。
確かに私は売り上げの貢献が出来ている訳じゃない。
実力主義の業界に身を置いている以上、お客を呼び込む事が出来なければ"存在価値"すらないのがこの世界の実情なのだ。
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「貴女の真面目さは今の時代にそぐわない。世渡りや事勿れでなければこの仕事は成立しないんですよ。」
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「それが貴女の意にそぐわないのでしたら、黙って大人しくしているか、お辞め頂いても構いませんよ?貴女の席が空けば、ニューフェイスの方を入れられますし。お客さんは安くお遊戯を楽しめる方で来られますからね。」
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「………っ、」
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勝ち誇ったような下卑た笑みが私の勇気を萎縮する。
結局、私みたいな店にとって都合の悪い人間は必要ないのだろう…。
暗い気持ちになりかけた瞬間、耳心地のいい低い声が背後から聞こえる。
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「__ねぇ、その子空き時間どれくらいあるのぉ?その子の時間買うわ。」
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「「!?」」
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後ろを振り返れば、赤い唇が特徴的でスラっとした長身の…
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_____オカマが居た。
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2:??ひらひらり
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「アザミ君にそこまで期待の目を向けられちゃあ、後々が怖くてしゃあない。」
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俺の反応を見て彼は苦笑いで言葉を濁す。
失礼な。そんな期待ばかり向けてはいない筈だ。何か物を強請(ねだ)ったわけでもあるまいし…。
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「いつ、そんな事しましたかね?俺の覚えている範囲では記憶に残っていませんなぁ。」
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「無茶振りしてくる君がよく言うなぁ。大抵の君の要件は私らの考え方の範疇を超えてくるから、肝が冷える事ばかりで困ってしまうよ。」
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「あははっ、褒め言葉として胸に留めて置きますね!」
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軽口を言い合えるのを許して貰えるのは、この人の器のデカさか…。
俺なんていつでも潰せると捉えるか。
この人への言葉選びにも油断が出来ないのは確かだな。
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「それでは、今回はここまでで…。」
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___バンッ!!
大きな音が突如、部屋の外から鳴り響いた。
するとその直後に怒りを滲ませた女性の声が上がる。
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「人を舐め腐るのもいい加減にしてよっ!!」
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1:??comeback
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「___では、今回のお話は以上になりますね。貴重なお時間を頂きありがとうございます。」
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「こちらこそ、有意義なお話を共に語らえましたこと心から感謝しております。」
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互いに深々と頭を下げて、礼を口にする。
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「また、こちらから桐咲(きりさき)さんに連絡を致しますね。既読無視や未読無視をしないで下さいよ?」
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「ははは、何を仰いますか。私がそんな軽薄な態度を見せた事ありますか?」
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「かれこれ、34回ぐらいは…。まぁ、とりわけ桐咲さんに関しては俺の脳に日々刻んでおりますね。」
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俺は他店舗で特に親交のあるオーナーへ相談を定期的に持ち掛けている。
内容は様々でお互いの店での方針についてや、意見交換、日本や世界の情勢から得られる内容に経済がどれ程の動きを見せるかなどの時事ネタを深掘りして、どんな形でこの街へと影響が出るか予測立てをする事が主だ。
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「いやはや、それ程までに互いの仲の深さが浮き彫りになっている証拠ですなぁ!」
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「ふっ、ふふ、桐咲さんだけですよ。俺のラブコールに対して袖を返すのは。」
そんな中で一際(ひときわ)、親しみ深い大人が目の前の彼【胡蝶の夢】の現オーナー、桐咲さんだ。
「この街でたった1人、貴方だけだ。長く街に身を置いていらっしゃる貴方だから信用が高いんです。」
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